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前にも少し書いたけど改めて。
◇前提:原作では無言の1コマ。
◇アニメ版のモノローグ:
《これでいい… これからは君自身のために歩め、真田…》
◇歌詞:
《Let Me Set You Free
それでいい これからは自分の為に
歩め Living for Yourself》
アニメでの「これでいい」を、歌詞では「それでいい」と言い直している。
もし意図的に原作の全国大会決勝で「真っ向勝負」を捨てさせた後の《それでいい………》というモノローグに引っかけたものなら、この歌詞の中で最も周到に仕掛けられた引用だと思うし、偶然なら奇跡だと思う。
同じ「それでいい」が、原作と歌詞のそれぞれで、正反対の意味で発せられている。原作では「俺の命令通りに自分を殺したおまえ、それでいい」、歌詞では「俺から離れて自分のために歩くおまえ、それでいい」。同じ言葉が、束縛の肯定から解放の肯定へと鮮やかに反転している。
同じ言葉を使いながら、その言葉の意味を自分で書き換える。これは自己認識の変化の刻印でもある。かつて自分が発した言葉の残酷さを——おそらくは意識的に——知った上で、同じ音に別の意味を込め直している。「俺はかつておまえにあの言葉を言った人間だ。しかし今、同じ言葉で別のことを言う」。
かつての「それでいい」は、承認の言葉。《それでいい これからは自分の為に/歩め》は、かつての承認の構造そのものの解除。もう「それでいい」と俺に言われるために動かなくていい、俺の承認を必要としない場所へ行け、という。
「これ」が目の前の状況を指すのに対し、「それ」は相手の側にあるものを指す指示語でもある。「これでいい」は自分の判断を肯定しているが、「それでいい」は相手の選択を——握手を拒んで去っていくという選択を、肯定している。主語が自分から相手に移っている。「自分の為に歩め」の前置きとして、すでに相手の自律性を認める語が選ばれているともいえる。
「これ」と「それ」の一文字の差に、全国大会(以前?)から合宿初期までの二人の関係の変化の全体が折り畳まれている…というギミック。なんて巧妙な。
意図的か否かにかかわらず、構造として不可避的にそう機能するようになっている。
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「for Yourself」、歌詞は切ないし歌い方は凛々しいけど、いかんせん声質がかわいすぎるために、かわいい。特に2番のサビの声がずっとかわいい。
あの曲に限らず、言語的情報と聴覚的情報の落差で脳がバグる快楽そのものが醍醐味、みたいな。