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主導権の下降線のようなもの…
《来なよ本気で 轟く咆哮に大地がうなり声を上げた》
《不意にボールが 額かすめて世界を切り裂いた》
《来なよ本気で》と招いておきながら、実際にそれが“来た”瞬間には《不意》をつかれている。自分が招いた攻撃に自分で驚いている。準備できていなかった、目を疑った……主導権が揺らぎ始める。
《強さも脆さも 誰よりもそう知っているよ》
《底の知れない 何かが黒色のオーラを纏い覚醒する》
目の前のそれを「底の知れない何か」としか表現できない……《誰よりも》全部知っているつもりだった相手を、名指すことすらできなくなっている。《知っている》から《底の知れない》への反転、あるいは転落。
《恐怖を抱いた 自分にももう余裕はない》
主導権の喪失の明示。
また、この曲には疑問符が二つ存在する。
《俺たちに 遠慮とか容赦なんかは 必要ないだろ?》
《絶望さえ 君は打ち砕いたのかい?》
一つ目はおそらく修辞的な疑問で、必ずしも答えを求めていない。あるいは自分自身の心への問いかけ。
二つ目は本当の問い。《のかい?》という語尾には、純粋な驚きと困惑がある。答えを知らないから知りたい、確信を持てないから知りたい、という欲求。
二つの疑問符の間に、認識の崩壊のようなものがある。最初の疑問符では、まだ修辞的な問いを投げかける余裕がある。二つ目の疑問符では、本当にわからないことを問うている。余裕のある問いから、切実な問いへ。
***
この曲には知覚と認識の動詞が多く出てくる。
《見据えるのは 熱く真っ直ぐな精神(こころ)》
《強さも脆さも 誰よりもそう知っているよ》
《信頼も 葛藤も きっとお互い
言葉にはしないけど 感じるよ》
《全力の 闘いの その果てでもがき輝く
夢を見届けよう》
《去りゆく背を見つめて 誓うよ》
これらによって曲全体が全知的な視線を持ち、理解する側/把握する側/観察する側から見た景色を映している。
(対照的に、「黒色のオーラ」にはこの種の表現がまったく登場せず、大部分が動作・行為として書かれている。《行くぜ》《壊せ》《振り切るぜ》《立ち上がれ》…)
だけど《不意に》の一語が、認識の優位に亀裂を入れる。
《不意にボールが 額かすめて世界を切り裂いた》
これは認識の中の出来事ではなく、身体の上に起こった出来事。視覚ではなく触覚。観察者が被接触者へ。
自分が支配しているはずの知覚の《世界》を、《ボールが切り裂いた》——身体的な衝撃を伴って。支配者の領域に亀裂が走った瞬間。
触覚による身体の記憶を語っている場面は、ここともう一つ。
《あの時 たった一度だけ
頬に覚えた熱い痛み 生きている証》
…しかしいかに主導権が下降線を辿るように見えようとも………原作ではページをめくった瞬間に7-1で勝負が決している。
あのあっけなさ…
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読めば読むほどよくできてるなぁと感じる。テクストとして楽しすぎる。
そして“観察者”の歌なのにジャケットでは目を閉じているという…あの絵、やっぱりすごく気になる