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● 249
《風が消えて 時が止まり 俺の
 風林火陰山雷 うなり声上げた
》

うなり声を上げたのは《俺の/風林火陰山雷》であって「俺」ではない。《俺の》の《の》は所有・帰属を示し、《風林火陰山雷》は「俺のもの」であるにもかかわらず、ここでは《俺》の制御下にはない。自分のものであるはずの技が、自分の意思を離れて自律し、勝手に身体を動かしている。身体が意思を裏切る。

風林火陰山雷は修練によって獲得された技であり、主体が意図して発動し、コントロールする武の体系である。能動性の極致、鍛錬された意志の結晶。その技が、主体の発動を待たずに《うなり声》を上げる。相手を前にして、意思の制御が追いつく前に身体が応答してしまう。

そして《うなり声》そのものが、意思的に発せられる声ではない。喉と声帯を意識的に制御して発する声ではなく、身体の内圧が声帯を通って不随意に漏れ出してしまう音。

《風林火陰山雷》という高度に洗練された武の体系が発する音が、洗練とは対極の、獣的な《うなり声》であるという矛盾。技は精緻であるはずなのに、その技が発する音は内臓的で生物的で、意思による制御が及ばない。

鍛え上げた技の核にある、鍛錬では制御しきれない獣性。文化的な構築物である武術の体系の内部で、言語以前の混沌から獣の声が噴出する。

身体の欲望は意思に先行して反応する。どれほど自己を鍛え、制御し、能動的な主体として鎧っても、欲望はその構築の内部で獣的な声を上げて鎧を突き破る。修練によっては制御できないものが修練の核にあることを、冒頭の二行がすでに語っている。


***


《風が消えて》——肌に触れる外部刺激の消失
《時が止まり》——外界の秩序の後退、閉域の出現
《俺の/風林火陰山雷 うなり声上げた》——不随意の獣性の噴出
《容赦のない 神の領域へと》——苛烈な力への畏怖と期待
《行くぜ おまえだけに 逢うために》——親密な邂逅への希求

世界の他のすべてを後退させて、能動的な意思の統御もすてて、俺の全存在をかけてただ《おまえだけに》逢うのだという、欲望の純度の高さがすがすがしい。美しい歌い出し。


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